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田中米吉展

 山口県立美術館で開催中の、田中米吉(よねきち)の展覧会に行ってきました。田中米吉氏は山口市在住の美術家です。なぜ画家と言わず美術家なのかと言うと、田中氏の作品が立体だからです。では彫刻家と言えばいいかというと、そう単純ではありません。田中氏の作品を絵画だとか彫刻だとか平面だとか立体だとか分類することは全く無意味です。この分類に関する近代美術誕生以来の論争について、ここで書くことはあまり意味がないので、ここでは単に田中米吉氏を「美術家」と呼び、彼の作品を「作品」と呼ぶことにします。
 この展覧会では田中米吉氏の作品を大きく5つのグループに分けて展示しています。まず第1のグループは「機能性」または単に「点字」と題された、紙やアルミ板の上に拡大された点字の模様の凹凸をつけた作品群です。これらは田中氏がテレビで見た点字に衝撃を受け、点字図書館で見た点が押された膨大な紙の山にインスピレーションを受けて着想したものです。全く色のない白の世界で6個の点の組み合わせの連続だけで意味を伝えるという、完全に「機能性」しかもたない点字に、新しい芸術の方向性を田中氏は見出したのです。小生はこれらの作品を見て、その表面に触ってみたいという衝動に駆られました。このような衝動を感じたのはこれが初めてです。美術作品に触れてはいけないという無意識に刷り込まれた常識を押しのけた衝動は、作品を鑑賞し続けることへの苦痛をも感じさせました。
 第2のグループはDockingというタイトルを付けられた作品群で、ドーナツ型のアルミ板に色を塗り、同心円になるように並べ、それぞれの奥行きを変えて配置したものです。ある視点から見るとアルミ板が完全な同心円に並び、その前後の感覚が失われて焦点がどこにも合わなくなり、少しめまいがしたような気分になります。同心円の組み合わせだけで見る者の感覚に作用するという、「機能性」のコンセプトの延長上にある作品群です。
 第3のグループはドッキング(空間の無限の脱皮)と題された作品群です。鉄の球面とチューブで構成されていて、球面の表面がチューブで裏面につながっていたり、2つの球がチューブで互いにその裏が表に、表が裏につながっていたりします。まさに「空間の無限の脱皮」です。
 第4のグループは透明アクリル材で持ち上げられた鉄の直方体です。カルダーのモビールと同じように自然にゆっくりと回転します。大きな鉄の塊がいくつも宙に浮いてゆっくりと回転するさまは圧巻です。
 最後のグループはUniversality(自己・非自己)と題された、昨年から今年にかけて制作された作品群です。点字のような穴(大きさはこぶしぐらい)の開いた鉄板を4枚組み合わせて柱状にしたものです。自己と非自己という対立するものがUniversality(万物共通)という英文のタイトルと組み合わされているところから、小生は「自己を見つめUniversalityを見出せば非自己をも理解しえる」という意味に解釈しました。田中米吉氏は「機能性」の探求から始まりUniversalityへと到達し、非自己を理解するという哲学の永遠のテーマにまで考えを深められたのでしょう。

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» 山口県立美術館で「田中米吉展」の展示解説 [山口展人]
80歳をこえて尚、現役の芸術家、田中米吉さんの展示解説が今週末にあるようです。正直、美術やら彫刻やらは何をどう見たらいいか分からない事だらけです。その点、田中米吉さんの作品はトリックアートのように普通に見て楽しめそうです。しかも、作者本人による解説ともなれ... [続きを読む]

受信: 2007/10/17 17:00

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